2015/09/29

アントマンちょー面白かった!

最近クソ映画しか見てない……


本拠地、イオンシネマスタジアムで迎えたサマームービーロード戦
先発ラブライブが大量失点、ペルソナ3も勢いを見せず惨敗だった
ニャル子さん、ポケモン、バケモノの子、ピクセル……とんでもないクソ映画のラッシュ……予告犯は唯一面白かった
スタジアムに響くオタクのため息、どこからか聞こえる「映画界も終わりだな」の声
無言で帰り始める観客達の中、オタクは独り座席で泣いていた
ムビマスや劇場版ストライクウィッチーズ、ゆるゆり なちゅやちゅみ!で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる制作陣・・・
それを今のアニメ映画界で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
単に自分のチョイスが悪いだけなのかもしれない
面白い作品にアンテナを張れていないだけなのかもしれない。
しかしそれにしたってこうもks映画を連続で引き続けるとは・・・
しかも周りの評判自体は決して悪くないのだ。自分が勝手にks映画だと思ってるだけなのだ
そういう自分の感覚のズレへの悲しみを感じるざるを得なかった
そもそも面白い映画が見たいのなら評判の良い作品をDVDレンタルやhulu等のインターネット配信サービスで見ればいいだけの話なのだ
それでも僕が映画館に足を運び続けるのは、やはり「映画館で映像体験をしたい」という思いがあるからなのだろう
しかしその結果は惨敗だった。今思えばイオンシネマのラインナップに期待した僕が全て悪かったのかもしれない

 「どうすりゃいいんだ・・・」オタクは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、オタクははっと目覚めた
 
「あれは…アントマン?」

面白く丁寧に練られた脚本、魅力的なキャラクター達、頼りなさを抱えつつもカッコいい主役のヒーロー、不必要で下世話な演出を挟み込まない観客に配慮した演出、面白く鋭いジョークの数々……

暫時、唖然としていたオタクだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「面白い・・・面白いんだ!」
券売機からチケットを受け取り、劇場へ全力疾走するオタク、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、意気揚々とブログを更新するオタクが発見され、吉村と村田は病院で静かに息を引き取った





本当に面白い映画だった。
しかし私はこの作品を普通の映画として楽しんだのかと言われるとそれは少し違っていて、どうも私はこの作品を「劇場版 仮面ライダー」だと思って終始楽しんでいたらしい。

参考動画  石ノ森章太郎生誕70週年記念作品











とにかく、なんと言い表したら良いのか分からないが、「アントマン」は仮面ライダーなのだ。
これに関しては映画を見ていただければ1発で理解してもらえると思う。
博士にベルトを与えられ、バイク(アリ)に跨がり、守るべきものの為に悪の組織を打ち倒す。
まさしくアントマンは、仮面ライダーなのだ。


アントマンのデザインからも仮面ライダーの意匠が見受けられる


そして仮面ライダーの映画を数本以上見た方ならばご納得いただけると思うのだが、その、なんというか、仮面ライダーの映画はつまらない…
いや、つまらないというと語弊があるだろう。微妙……いや、惜しい……
とにかくなんだか言い表せないがしこりが残る残念感が仮面ライダーの映画には存在していた。
決して面白くないわけではない。勿論劇場版仮面ライダーの中には面白い映画も数ある。しかし何かが引っかかる……。
何か物足りない……。
そういうものを私は長年、劇場版 仮面ライダーに抱え続けていた。

が、しかしその思いももう消え失せたと言っても差し支え無いだろう。
「アントマン」を見たからだ。
これから先、ゴジラよろしく仮面ライダーがハリウッドで制作されるとしても、私は「アントマンがあるからそれでよくね?」と反応することだろう。
それぐらい、アントマンは正しく「僕が求めた理想の劇場版 仮面ライダー」と言える作品だった。
本当に満足している。





アントマンを語る際に欠かせないのはその魅力的なキャラクター達だろう。
決してアクが強いわけではない、ともいえば薄味とも見れるキャラクター達なのだが、それぞれの意志や信念といったものが多方向から描かれており、仲間も悪役も端役も、誰も彼もがなんだか憎めない魅力的なキャラクターに仕上がっている。ラスボスも良いキャラをしている。

特に主人公のスコット・ラングは良いキャラクターだ。
物語は彼が出所し、これからは心を入れ替えて真っ当に働くと宣言し31のバイトを始め、一瞬でクビになるところから始まる。
この時点で私は既に主人公を素晴らしいキャラクターだと思ってしまっていた。
31をクビになるキャラクターに悪い人間は居ないのだ。

また彼の「普段は頼りないが、実はすごい力を持っている」というのもアリを意識したキャラクター造形なのかなと思いますね。

脚本も素晴らしい。この出所の道中の何気ない会話の中で、彼の刑務所仲間が「刑務所のボスに勝てたのは俺だけだぜ」という話をするのだが、この伏線が後半になって活かされた時はたいそう驚いた。
伏線を観客に気付かれないように広げ、後半で一気に回収していく様があまりにも見事なのだ。
まるで田中ロミオのエロゲーをプレイしているような感覚に陥った。
これは本当にハリウッド映画なのだろうか? と疑ってしまうほど丁寧な脚本なのだ。

最近見た「ピクセル」はキャラクターのアクが強いだけで全く魅力的じゃないし、敵キャラクターの意志など微塵も存在しなかった。
そういう意味で正反対の出来だったし、対比も含めて二重の意味でアントマンの出来の良さに感動した。



演出面も良かった。本編中は一切不快さや冗長さを感じる演出は行われない。
物語がテンポ良く、スピーディーに次へ次へと進んでいく様は実に気持ち良い。


アントマンの演出の良さを代表するシーンとして、終盤に仲間のアリが敵に殺されてしまう場面がある。

映像業界の悪しき風習に、仲間がやられた時過剰に悲しみ死を印象付けさせる。
というものがある。
「俺のことは気にせず早く行け!」「で、でも……」「早く行くんだ!」
というものである。 皆さんの記憶にもいくつか思い当たるフシがあるのではないだろうか。
私は最近ポケモン超不思議のダンジョンで見ました。

言うまでもないがコレを見せられた方はたまったあもんじゃあない。はよ行けという話である。
そもそも、こういう類いのシーンに望むにあって観客側は覚悟と準備を済ませているケースが大半なのに、肝心の主人公が覚悟も準備も出来ていないというのは間違いなく主人公と観客の齟齬だし、感情移入もくそもなくなるのだ。
全くダメダメなシーン展開の1つだろう。

だがアントマンの演出は実にクールだった。
相棒のアリが撃ちぬかれ、羽根がしばらく空を舞い地に落ちる。
主人公はそれを見て暫時悲しみ、別のアリに乗り換えて突撃を再開する。

これだけだ。死体が映されるわけでも、主人公が長時間アリの死を嘆き悲しむわけでもないのだが、十分「死の悲劇」は伝わってくる。

しかもこのアリ自体、出番は多少あったがそこまで重要なアリではなかった。
その場に代わりはいくらでも居るのだ。
だから私は主人公がそのアリの死を瞬時悲しんだ時「えっ、そこで悲しむの?」と思った。
そして次の瞬間には「ああ、この主人公はたくさん居る中でたった1匹のアリの生き死にすら悲しめる優しい主人公なんだ」と気付いた。
作中でこの主人公が優しいと明言されることはない。
良い人、ですら言われることはない。
しかしそれでも、台詞ではなく細やかな演出の力でキャラクターのイメージを観客に植え付けていく
ことで、観客に主人公のことを「優しい良いやつ」と思わせ、劇中でもそのように物語が進んでいく。
観客側の意識と映像の中での扱いが決して明言されることなくリンクしているのだ。




ただ手放しに褒められる作品だったかと言われると案外そうではない。



1つは最後のチューシーン。
この映画はそういうものを挟まない、「分かっている」「硬派」な作品だと思っていただけに、少し残念ではあった。
これは完全に個人の趣向でしかないし、オタクが勝手に期待して勝手に裏切られただけの話なのでこの部分はあまり気にしていただく必要はないです。

キスシーンのイメージ図


そしてED後の蛇足シーンだ。ハリウッド映画のお約束よろしく、次に繋がる形でこの映画は終わっているのだがそのつなぎ方が長いしつまらないしくだらないしでとてもしょーもない。
あれだけ本編が面白かったのだから、そのままスパっと終わって余韻に浸らせて欲しいというのが正直なところだろう。
この部分に関しては擁護のしようがないくらい酷いので、なんならエンドロールが流れた時点で席を立ってもいいと思う。2回目も見に行くつもりですが、その時はそうします。

理想的な物語の〆方の一例



私が気に入らなかった点は全て後半に集中している。
本編自体は最高なのだが、以後の蛇足がどうにも余韻をかき消すのだ。
そういう部分を除けば「アントマン」は最高の映画だったし、とても面白かったです。
繰り返しますが仮面ライダーが好きな人には是非見てもらいたいですね。絶対に満足できると思っている。

仮面ライダーザビーも登場するぞ!





帰りに31のアイスクリーム食って帰路につきました。
31は鋭いからな