2020/12/30

紅月ゆれる恋あかり 感想

 
 
制作 CRYSTALiA(2020)
点数 98点
 
 
スクライド×リリカルなのは×蒼の彼方のフォーリズム
 
 
この作品を一言で語るならそういうことになるでしょう。作品を語る際に他社作品を持ち出すのは結構失礼なので言い方を変えると「熱血スポ根友情殴り合いエロゲー」となります。ピンと来ませんね。なかったことにしてください。


CRYSTALiAの第四弾作品。CRYSTALiAの作品は全て世界観を共有しておりオリガミという特殊能力を行使する剣が存在する世界が舞台。
世界観を共有していると言えば聞こえはいいが背景や舞台が全て同じで使い回しが効くのでコストに優しい。これらの仕組みもあってか1年に1作ペースで大作を出すというエロゲメーカーとしてはありえない規格外の発売ペースを誇っており、他のエロゲメーカーはおろか延期開発凍結メーカー倒産に慣れ切ったユーザーをも驚愕させている最先端のメーカーだ。
 
その尋常ならざる発売ペースのためか、前作「白刃きらめく恋しらべ」は同じ見た目のモンスターをペチペチし続けるだけという非常にアレな出来だったのが同じく1年後という短い期間で発売された今作は大きく化けた。
 
白刃きらめく恋しらべはこれをペチペチして遊ぶゲームだった

 
 
 
分かりやすい戦闘描写、燃えるエフェクト、スポーツや勝負事に関わる人間の苦悩や葛藤を正面から描いた見事なシナリオ、熱い展開…… 
 
傑作だ!


この作品は本当に面白かった。ともすれば蒼の彼方のフォーリズム(※)の二番煎じとも取られかねないような熱血スポーツ物へのアプローチだが燃えるように熱い戦闘描写と魂と魂のぶつかり合いで違うベクトルに昇華させきった。
短い(と思われる)開発機関でよくもここまでのクオリティの作品を作ったと思う。凄いです。
 
※熱血新スポーツエロゲの金字塔。ブランドSpriteは10年でタイトルを2作品しか出していないレジェンド。延期、開発凍結、倒産のエロゲメーカーグランドスラムを達成したことで有名。
 
 
名作っぽいSS

 
才気溢れる少女たちが元自衛隊の剣豪新米教師の元で学園最強の称号、刀仕襧宜を目指す本作はストーリー物としても萌えゲームとしても、そしてエロゲーとしても全てが高水準のまさに完全無欠のエロゲーと言ってもいいだろう。例えるなら全盛期の松井稼頭央だ。
この三位一体の完成度を成り立たせているのが「メインシナリオは一本道でクリア後にイチャラブの個別ルートが開放」という独自のルートシステム。
 
公式サイトにはこう書かれている

 
 これだけなら他のエロゲにもありそうな構造だが、それを独自足らしめているのが聞いたこともない謎のシステム「メインシナリオの進行に合わせてHシーンが開放されていく」だ。これは衝撃的だった。 
メインシナリオではキスどころか手も繋がないような生徒と先生の関係だったはずなのに、タイトル画面に戻ってHシーンを開くと何故かさっきまでのシナリオの流れでHシーンが繰り広げられる。シーンの時系列や設定はとにかく意味不明だがこの背徳感は最高だった!
俗に言う「全年齢版を遊んでからR-18版を遊ぶと数倍興奮する」理論だ。それをまさか1作品で完結させてくるとは……驚愕だった。
エロゲの本懐に立ち返ったともいえるこの革新的なシステムは令和時代のエロゲのグローバルスタンダードとななるポテンシャルを十分に秘めている素晴らしいシステムだ。時系列や設定は意味不明だが、そんなことは些細な問題ではない。むしろ意味不明さ辻褄の合わなさを隠そうともしない清々しい姿勢は好印象。自由に解釈するとあのHシーンは童貞の主人公が生み出した妄想にも見える。主人公は夜な夜な生徒に対してこの妄想で致しているというわけだ。私の解釈はこれでいかせてもらう!
 

またほぼ全てのサブヒロインにHシーンがあるというのも素晴らしい。
サブヒロインにHシーンを用意しろの会会員としてこのような姿勢のメーカーが存在することにただただ感謝の意を示したい。
フォロー元でもある蒼の彼方のフォーリズムは魅力的なサブヒロインをしこたま出しておいてHシーンは0という有様。青春の瑞々しさ、描写の丁寧さという点では蒼の彼方のフォーリズムは頭一つ抜けたものがありましたが、熱血度、そしてサブヒロインともHできるというエロゲとしての崇高な姿勢では圧倒的に本作が上と言えるでしょう。
 

そして蒼の彼方のフォーリズムがそうだったように本作はコンシューマ、TVアニメという舞台に行っても十分輝ける作品だ。
シナリオと萌えとエロの3点の高い完成度において評価してきたが、ここからエロを抜いても十分にやっていけるポテンシャルが本作にはある。 
特に手に汗握るトーナメントこうhなんはTVアニメで彼女たちが動いてるシーンを妄想しながらここでAパートの終わり、ここでED挿入して11話終わり……という妄想を常時行いながら読み進めていた。スクライドさながらの最終決戦は井出泰彰のReckless fireを脳内で流しながらプレイしていたがちゃんと作中でも熱い挿入歌が流れてくれて感動した。解釈一致や!!!!
特にEDのスタッフロールでは今までのシーンを鮮明に思い起こしながらクレジットの横でアニメのプチ総集編が流れていた(脳内)
この時私は紅月ゆれる恋あかりがアニメ化して大成功することを確信したがいつまでも妄想の話をしていてもキリがないのでこの辺にしておきましょう。
 
ここスクライド

 
 

 一本道のシナリオは感想を見たところ賛否両論あるようですが、(どうやら一本道シナリオはADVの利点を捨てているらしい。選択肢押して紙芝居めくるだけのゲームに何がADVの利点じゃ! そんなちょこざいなゲーム性ならハナから無いのと同じじゃい!
 
個人的にはこの形で正解だったと思います。そもそも何故名作されるエロゲの数々がトゥルールートを採用しているかという話で、個別ルートを作る明確な意味があるならともかく、惰性で作られた個別ルートを遊ばされるぐらいなら一本道の方がよっぽど気持ちよく遊べるというもんでしょう。前作の白刃きらめく恋しらべはそういうエロゲでした(まだ擦るか……)
 
 
シナリオ・キャラ・エロが揃ったパーフェクト・エロゲこと紅月ゆれる恋あかりだが1つ欠点がある。
プレイ中主人公が童貞であることが少なからず強調されます。これは良い。本編でいじられることがあまり無いので作品の品格は保たれているし、強くて優しくて立派な熱血先生が可愛い教え子で童貞喪失。これは萌えだろう!
 
だのいうのに関わらずこの主人公、全然感動しない! 舐めてんのか!
 これは多くのエロゲに言えることだがエロゲ主人公ってやつは童貞の分際で落ち着きすぎる。
慌てろって言ってるんじゃないのよ。せっかく辿り着いたHシーンなのに主人公のアワアワする茶番なんか見せられても困るんですよ。
ただ感動してほしいんだ! 人生で初めて女体を味わえた感動を主人公が地の文で表現することで我々は初めて主人公と一体になれる。そうなんじゃあないんか!? ええ!?

ただこの童貞の感動というやつ、皆さんはご存知でしょうが殆どのエロゲはできていません。
萌えエロゲではウブな高校生が初HなのにAV男優レベルのテクニックでヒロインを絶頂に導くことはザラです。
あるいは最初はアワアワするけど挿入したらノルマは果たしたと言わんばかりに落ち着くパターン。だからアワアワは余計やっちゅうてんねん! 何故付けても意味がないリアリティを形式だけ表現して本当に意味のあるリアリティは無視するのか?
元自衛隊の童貞熱血先生と学生の処女という組み合わせは非常に萌えるものだっただけにこれは勿体なかった。
と言っても、前作白刃きらめく恋しらべの無味無臭のHシーンに比べたら今作のHシーンは大きな進歩がありました。(まだ擦るか……)
それだけにより高いレベルを求めてしまいます。
 
一般に行くのかエロを続けるのかわかりませんが……
 
 
期待してるぜ! CRYSTALiA!!!!
 
 
 

 
 
 
 
梨々夢の胸を揉む描写がないのはバグだから修正してください